3. 行政書士試験法律科目学習マニュアル (3) 理解と記憶の手順
どのように学習をすすめて教材をいつ加工するのか、その教材をいつ使うのかを説明する。 まずは科目ごとの学習の順序である。
@ 基礎法学
一番初めに勉強する科目は「法学基礎」である。 条文の読み方、特別法と一般法の関係など、すべての法律に共通する事柄を学ぶ。 この科目はそれほど難しくはないが、文字どおりすべての法律を学ぶ基礎となるのでしっかりとマスターしてから、 個別の法律の勉強に進んでほしい。もし、おろそかにすれば他の科目の理解のスピードが遅くなり、 知識があいまいになってしまう。
以降に、法学基礎の中から特に重要である部分をピックアップして紹介しておいた。 これらは、ここでマスターしてほしいぐらい重要である。
(ア) ()内の読み方と理解の仕方

条文内に()がある場合、最初に読むときは()内をとばして読む。 ()は、注意書き、但し書き、補足等のために用意されているものなので、 まずは原則を理解することが先だからである。
例の場合、(以下この章において「管理者」という。)の部分と (以下「事務管理」という。)の部分をとばして読む。そうすることによって、 条文の本筋の理解が容易になる。
ただし、本筋を理解した後で()内をしっかりと読んで、 本筋をどのように補足しているのかを確認することを忘れないように。 例の場合は「義務なく他人のために事務の管理を始めた者」=「管理者」、 「その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、 その事務の管理(を行うこと)」=「事務管理」となる。読み替えてみると、 「管理者は事務管理をしなければならない」となる。
(イ) 「又は」・「若しくは」の意味と使われ方

「又は」と「若しくは」はどちらも、あるものを選択的に接続する場合に使われる接続詞であるが、 条文上では一定のルールに従って使用されている。 「又は」は「若しくは」よりも大きいグループ間を接続するために使われる。 すべてが同じグループの場合は「又は」が使われ、グループが3つ以上になる場合、 一番大きなグループ間を接続するために「又は」が使われ、 それ以外のグループ間を接続するために「若しくは」が使われる。 上記例の場合のグループ関係を括弧でくくってみると次のようになる。

このルールを知っていれば「国会の」が「両院」と「一院」のみを修飾し、 「議会の議決」を修飾しないことがすぐにわかる。つまり、 「両院」と「一院」は国会の衆議院と参議院の両方または一方のことを指し、 「議会」は地方公共団体の議会のことを指している。
(ウ) 「及び」・「並びに」の意味と使われ方

「及び」と「並びに」はどちらも、あるものを並列的に接続する場合に使われる接続詞であるが、これも、 「又は」と「若しくは」と同じように使われ方に一定のルールがある。
「及び」は「並びに」よりも小さいグループ間を接続するために使われる。 すべてが同じグループの場合は「及び」が使われ、グループが3つ以上になる場合、 一番小さなグループを接続するのに「及び」が使われ、 それ以外のグループを接続するために「並びに」が使われる。
上の例のグループ関係を括弧でくくってみると次のようになる。

こうしてみると、「処分、行政指導、届出に関する手続」と 「命令等を定める手続」とではそのグループが違うことがわかる。
ここで大事なことは、それぞれのつながり方にグループ関係があることを理解することである。 複雑な法律を理解するためには、体系的に理解することが大切である。
体系的理解とは法律世界のマップができていることだと私は考えている。 法律の勉強は自分が今どこで何を勉強しているのかを見失いがちである。だから、 自分のポジションを見失わないように、必要なときに必要な情報を取り出せるように、 地図を作ることが必要になる。この地図ができた状態が体系的理解である。そして、 各文言のグループ関係を把握することは体系的理解に不可欠である。よって、 「又は」・「若しくは」、「及び」・「並びに」の使われ方はしっかりとマスターしなければならない。
(エ) 「みなす」・「推定する」の意味

「みなす」は法律的にあることを擬制する(実際はそうではなくても法律的にはそう決めてしまう)場合に使われる。
例の場合、未成年者が結婚すると民法上は成年者と同一に扱われることを意味している。 実際には成年者(ご存知のとおり、成人年齢は20歳である(民法20条))になっているかどうかは関係がなく、 この決定はくつがえらない。

これに対して「推定する」は真偽が不明な場合に、仮にそう決めてしまうことを意味する。 したがって、もし反対の事実が証明されれば決定は変更される。
例の場合、妻の懐胎している子の父が夫でないことを証明すれば、夫と子との親子関係を否定することができる。
つまり、「みなす」は反証(反対の事実を証明すること)が許されないに対して、 「推定する」は反証が許される。この両者の違いは重要である。
学習の順序という本筋からずれてしまったが、すこしだけ法学基礎のお話をさせて頂いた。 それだけこれらは重要であるということである。法学基礎でもう一度勉強することになるが、 そのほかの基礎事項と一緒に、しっかりとマスターするように。
A 行政法と憲法
話をもとに戻そう。法学基礎をマスターした後、学習する科目は行政法である。 行政書士試験において行政法はとても高いウェートを占める。だから、一番初めに勉強して一番力を入れる科目となる。
ただ、行政法をメインに学習しながら憲法も同時に学ぶことをすすめる。なぜ、この2科目を同時に勉強するかというと、 この2科目であつかう法律の目的は共に共通しているからである。だから、行政法の理解が憲法の理解につながり、 憲法の理解が行政法の理解につながる。両科目を同時に学習することで理解のスピードが早まる。
ちなみに、両科目であつかう法の目的は「国家権力を抑制することで国民の自由・権利を保護すること」にある。
B 民法と商法
つぎに、民法をメインに学習しながら、商法をマスターする。この2科目もその目的が共通しているからである。 その目的は「私人間の利益の調整」である。しかし、少しその分野が異なっており、 民法が一般私人間の利益の調整を規定しているのに対して、商法は商売人が関与する場合の利益の調整を規定している。 民法が一般規定で商法が特別規定(特別規定は一般規定に優先して適用される)という関係にあり、 原則と特則となる。これらを同時に学ぶことで相互のつながりが見えてくるだろう。 それによって、個々の理解、そして両者の関係の理解が早まり、深まる。
C 講義中(視聴中)になすべきこと
では、実際の学習方法を説明する。CD・DVDをはじめに視聴するときにしなければいけないことは、 二度とCD・DVDを視聴しないでも勉強ができるようにすることである。 CD・DVDを視聴することは一番時間がかるため、使用しているテキストを見返しただけで、 瞬時に必要な情報が取得できるようにしておく。テキストの重要点をマークし、 講師の話した具体例をメモする。具体的な記入方法は3.(2)「教材の加工方法」で述べたとおりである。
CD・DVDを視聴するだけという行為は、意味がないばかりか逆効果であるので絶対に行ってはいけない。 一応講義を聴いているのでわかったつもりになってしまうからである。 あいまいな知識では試験にはまったく役にたたないので、眠気が襲ってきたら即視聴をやめること。
視聴中はしなければいけないことを必死になって行うように。 理解は復習のときでもいいというぐらいの気持ちで、講義中になすべきことに専念していただきたい。
D 復習でなすべきこと(復習の仕方)
ここからが本当の学習といっても過言ではない。加工したカラーを頼りに基本事項を確認していく。 注意することは必ず口に出して人に伝えられるぐらい明確に理解して記憶し、 それらができているかを確かめることである。頭にだいたいの内容が浮かぶだけでは不十分である。 不明確な記憶は判断を遅らせ、鈍らせるからである。
もうひとつ注意して確認することがある。黄色で塗りつぶした文言を抜かしていないかどうかである。 黄色の塗りつぶしの部分は抜かしてはならないキー文言であるから、 同じような意味合いが言えたと自分で感じた場合でも、 黄色の塗りつぶしの部分の文言を抜かしている場合は記憶しすこと。
(ア) 定義の確認方法
緑の塗りつぶしの部分(用語等)を見て、緑の下線部分と同様のことが言えるかどうかを確認する。 また、具体例も1つか2つは言えるようにしておく。
(イ) 判例の確認方法
緑の塗りつぶし部分(事件名)を見て、事件の概要、結論、理由を言えるかどうかを確かめる。 理由が規範の形(要件・効果の形)になっている場合は、その規範も記憶しておく。 はじめは、規範は覚えなくてもよいが、余裕が出てきたら覚えるようにする。
(ウ) 要件・効果の確認方法
青の塗りつぶし部分(効果)を見て、その要件を∧、∨(かつ、または)を含めて正確に言えるかどうかを確かめる。
(エ) 論点・分岐点、通説・反対説の確認方法
黄色の囲み部分(論点・分岐点)を見て、通説の結論と理由、反対説の結論と理由を言えるかどうかを確かめる。
はじめに覚えるのは通説のみでかまわないが、余裕が出てきたら反対説も覚えるようにする。
(オ) Cf.の確認方法
これらのマークと該当箇所を見て、参照している相手とどこが同じでどこが違うかを言えるかどうかを確認する。
(カ) 表や図の確認方法
「覚」マークがついている図や表がテキストを見ないでイメージできるかを確認する。
以上のポイントを確実に記憶していく。法律の勉強は理解していることは大前提として記憶することも大切である。 間違った場合はその場ですぐに覚え直すようにする。